WISC-Ⅳの差が大きい?発達障害との関係と支援のヒント

特性を理解する

<2025年6月更新> 

子供がウィスクという検査をすすめられたけど、検査と発達障害は、どういう関係があるの?

子供がWISC‐Ⅳを受けて、言語理解だけ高い結果が出た。

このことから何がわかるの?

知覚推理が高い子の特徴は?

こんな疑問をお持ちの方はいらっしゃいませんか?

 

この記事をお読みいただくと、

  • WISC‐Ⅳの数値が意味すること
  • 検査の結果から見える子供の特性と将来像
  • 4つの指標(言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度)の「差」と発達障害の関係

について知って頂くことができます。

 

WISCの結果を正しく理解することで、お子さんに合った環境を整え、将来の進路選択をするヒントにすることができます。

検査を躊躇される方もいますが、WISCは発達障害のラベルを張るためのものではなくお子さんの特徴、困っていること、強みを理解するためにとても役立ちますので、積極的に活用していきましょう!

 

この記事を書いている私さとは、ASDとADHDの特性を持つ男子高生の母親で、ライターです。

息子は発達検査と知能検査を計4回ほど受けましたが、最初は結果が出てもその意味が理解できず、どのように検査結果を生かしていけばよいのか、大きな戸惑いを感じました。

その後、専門家のご指導のもと色々と勉強する中で、WISCの結果には子育てのヒントがたくさんあることに気づき、これまでの子育てに生かしてきました。

そんな私の気づきを少しでもご紹介できれば…と思っています。

私たちについて詳しくはプロフィールをご覧ください。

 

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1. WISC‐Ⅳ(ウィスク)検査結果の見方

1-1. WISC‐Ⅳ検査の概要 

現在、WISCの中ではWISCⅤが一番新しい検査ですが、この記事ではWISC-Ⅳを中心にご紹介します。

WISC-Ⅳは、

  • 5歳0ヶ月〜16歳11ヶ月を対象とする知能検査で
  • 全体的な認知能力を表す全検査IQ
  • 「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4つの指標をそれぞれ数値化した結果

 を得られる検査です。

 

1-2. 4つの指標(言語理解・知覚推理・WM・処理速度) 

WISC‐Ⅳの4つの指標から、お子さんの特性を理解することができます。

  • 言語理解
  • 知覚推理
  • ワーキングメモリー
  • 処理速度

それぞれの指標から、どんな特性を読み解くことができるのでしょうか。

 

言語理解指標(VCI)

言語による理解力・推理力・思考力を見る指標です。

言葉でコミュニケーションをとり、推論する力に関する指標なので、この指標が低い子供は、言語によるコミュニケーションや思考が苦手という傾向があります。

より具体的に言うと、言葉での指示が理解しにくかったり自分の気持ちや状況を言葉で説明できずトラブルになりやすかったり…という困難が生ずる場合があります。

 

この数値が高い人は、論理的に考え、説明すること、文章を読解することが得意な場合が多いとされています。

ただし「言語理解が高い=コミュニケーション力が高い」とは言えないことに注意が必要です。

語学の習得などの勉強が得意な人も多いです。

 

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知覚推理指標(PRI)

視覚的な情報を把握し推理する力や、視覚的情報にあわせて体を動かす力を見る指標です。

新しく得た情報への対応力や解決力にも影響を与えると言われています。

この指標が低い子は、絵や図、地図から情報を読み取ることが難しかったり文章や話の要点をまとめるのが苦手だったりします。相手の表情から気持ちを読み取ったり整理整頓が難しいという問題が生ずる場合もあります。

 

反対にこの数値が高い人は、図形や地図の読み取りが得意だったり、視覚情報から論理的に推測したり、因果関係を分析したりすることに長けている人が多いです。

  

ワーキングメモリー指標(WMI)

情報を一時的に記憶しながら処理する能力を見る指標です。

複数の情報を同時に処理したり、順序立てて処理したりする能力を示しています。

 

この指標が低い子は、読み・書き・計算に影響が出るほか、耳から入った情報を覚えたり、頭の中で処理したりすることが苦手な傾向があります

具体的には、口頭での指示が覚えられない、気が散りやすくマルチタスクが苦手、忘れ物が多い、会話の途中で言葉に詰まることがある、と言った特徴が出やすいです。

 

反対に、この数値が高い人は、人の話を整理して聞いたり、順序だてて的確に話すのが得意、マルチタスクに混乱しにくい、気が散りにくいなどの特徴があります。

    

処理速度指標(PSI)

視覚で得た情報を処理する速さを見る指標です。

単純作業をスピーディーに行ったり細やかな作業を決められた時間内に行う能力がわかります。

この指標が低い子は、文字を書き写すのが苦手、書く時の姿勢や筆記用具の使い方がぎこちない、計算が遅い、時間内にテストや課題が終わらないなどの困難さが生ずる場合があります。

 

この数値が高い人は、作業が早くて正確、指示が変わっても混乱せずスムーズに切り替えられるといった特徴を持つ人が多いようです。

 

ワーキングメモリーは聴覚的な短期記憶に関連が深いのに対し、処理速度は視覚的な短期記憶に関連しています。


<我が家の場合>

息子は、WISC‐Ⅳの4つの指標のうち、処理速度が低く(発達特性がある人の中で、最も多いパターンのようです)、今も「ノートをとる」のは苦手です。

授業をよく聞き、テストの点数が良い教科でも、ノートを取れていないので成績が下がってしまう場合があります。

「成績評価にノートを入れないでください。」とお願いすることが現段階では難しいので(本当はそれも配慮してもらえれば…と思っています。)、「努力してもノートやプリントを書けないことがあるので、ノートをとれないことを厳しく叱責することは控えてください。」と学校にお願いしています。

 

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1-3. 「全検査IQ」から何がわかる?

全検査IQ(FSIQ)は、これまでお話しした「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4指標の結果を合わせたものから得られる数値です。

平均を100として検査が作られているので、分布は以下の図のようになります。

出典 Wikipedia-知能指数

全IQが85~115であれば、平均的なIQということになります。

 

130以上 極めて優秀 全体の2.2%
120~129 優秀 全体の6.7%
110~119 平均の上 全体の16.1%
90~109 平均 全体の50.0%
80~89 平均の下 全体の16.1%
70~79 境界知能 全体の6.7%
70未満 知的障害 全体の2.2%

『発達障害事典』(2011年・明石書店刊)

 

IQ130以上生まれつき特定の能力が非常に突出している人を「ギフテッド」と言うことがあり、クラスに1人程度いるのではないかと言われています。

 

反対に、IQが70未満になると、知的障害の領域になり、51~70は軽度知的障害、36~50中度知的障害、21~35重度知的障害、20以下で最重度知的障害と分類されます。

 

<IQと発達障害の関係>

発達障害を持つ人は、様々なIQの層に分布しており、4指標の数値間に大きな差がある場合は、全検査IQが高くても低くても発達障害と診断される場合があります。

全検査IQが低い場合は「知的障害」と診断される場合があります。

 ※ただし4指標の数値に大きな差があることだけで発達障害になるわけではありません。詳しくは後ほどこちらで。 

 

1-4. それ以外の項目が意味すること

合成得点

WISC-IVの結果を見る際は、全IQも4つの指標もともに、この「合成得点」に注目します。

評価点の平均を100とし、その上下のばらつき(偏差)を割り出したものです。

85~115の間に、約68%の人が含まれます。

 

パーセンタイル

それぞれの検査項目で、100人のうち下から何番目かを示しています。数字が小さいほど水準が低く、大きいほど水準が高いということになります。

例)パーセンタイルが「5」…100人中下から5番目、上から96番目

  

信頼区間

数値の信頼度と、そこから推定される幅が示されています。
例えば「PSI=113、90%信頼区間、PSI=103〜119」の場合、

「検査結果は処理速度113と言う結果でその信頼度は90%。103〜119の間に位置すると推定される」

という意味です。

 

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2. WISC‐Ⅳ 4指標の差が大きいと発達障害?

<結論> 

4つの指標間に差(ディスクレパンシー)がある場合、それだけで発達障害と断定されるわけではありません。ただ、差が大きければ発達障害と判断される可能性は高まります

その場合にも、日常生活・社会生活に著しい不適応を起こしているかなどを考慮して行なわれる、医師の総合的な診断が必要です。

  

2-1. 指標間の差だけで発達障害と判断しないが可能性は高まる 

発達障害の診断は児童精神科医などの医師がおこないます

 

診断は、実際の生活にどの程度困難があるかを伴わせて行われるため、WISCなどの検査結果だけで発達障害と断定するわけではありません

 

ですが、4つの指標の間の差が大きいほど、本人の困り感が強くなったり、社会的に困難な場面が出やすいので、発達障害の可能性を考えるようになります。

 

2-2. 「差が大きい」の目安 

WISC-Ⅳでは、指標間に15点以上の差があると「差が大きい」とされ、発達障害が疑われる目安のひとつとされています。

 

ただし、15点以上差があっても、それだけで発達障害と診断されるわけではありません。

実際には、差があっても日常生活に困りごとが少なければ、診断に至らないケースもあります。

 

また、全体のIQが高い子は指標間に差が生じやすいので、15点以上の差があっても発達障害とはされない場合があります。

 

全IQが130以上あるギフテッドで、かつ発達障害の特性を持つ人を2Eギフテッドと言いますが、2Eギフテッドで高い部分の指標が突出しているような場合には、低い指標との差が特に大きくなりやすいです。

 

<我が家の場合>

息子は全IQが138前後で2Eギフテッドに該当するそうです。言語理解が150台後半であるのに対し、一番低い処理速度は110台なので、高い指標と低い指標の差は40以上あります(知覚推理とワーキングメモリーは中間的な数値です)。

2Eギフテッドには、息子のような「言語理解が高く処理速度が低い」というタイプが多いそうで、このタイプの子は日常生活に困り感が出やすいそうです。

処理速度を改善するため、これまで勉強をするときには時間を計るなど、ある程度時間を意識をして取り組ませるようにしてきました。ただ、処理速度が遅い子には、落ち着いて取り組ませることが大切だと専門家から聞き、遅いことを責めるような状況にならないよう心掛けています

発達障害を持つ子を育てるコツとして、「得意を伸ばして、苦手はほどほどに」とよく言われますが、処理速度の改善もほどほどにしておかないと本人が辛くなってしまいます。苦手なことは頑張っても平均程度にしかなりません、我が家でも苦手の克服はほどほどに、時にはあきらめも大切だと考えています。

  

2Eギフテッドについては、こちらをご覧ください↓ 

【2Eの特徴】ギフテッド+発達障害の子のリアルな姿とは?
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2-3. 同一指標の中でも凸凹がある場合も 

同一指標の中に得意・不得意があって、その中に凸凹が生ずる人もいます。

「同一指標の中の凸凹」についてはあまりピンとこないかもしれません。よろしければ以下の息子のケースをご覧下さい。

 

<我が家の場合>

息子の場合、知覚推理は120台後半なので比較的高い方ではあります。

ただ、「知覚推理が高い人は、整理整頓や、見通しを持って行動することが得意」と言われますが、息子はそれらが極端に苦手です。

一方、地図や地形を理解することは得意で、漢字なども一度見ると形をすぐに覚えてしまいます。映像の情報も正確に記憶してしまうので、知覚推理の中で非常に得意な部分があることがうかがわれます。

 このように細かく見ていくと、知覚推理の指標の中でも色々な能力が含まれており、息子のように一つの指標内で凸凹がある人もいるのではないでしょうか。

 

ワーキングメモリーも知覚推理と同様に比較的高いですが口頭だけの指示は頭に入らないことがあり、幼稚園時代は文字で書いてもらうなどの視覚支援を受けていました(現在では比較的改善されています)。

こちらも、ワーキングメモリーで示される能力の中に、高い部分と低い部分があるのではないかと考えています。

 

 

2-4. 結論

WISC-Ⅳ検査結果の4つの指標間に差があっても、それだけで発達障害と診断されるわけではありません

ただし、差が大きければそれだけ社会生活上の困難が生じやすいので、発達障害と判断される可能性は高まります

その判断には医師の診断が不可欠となります。 

 

 

 

いかがでしたか?


この記事が、少しでもあなたの育児のお役に立てば、こんな嬉しいことはありません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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