<2024年4月更新>
最近、「ギフテッド」がネットやテレビで頻繁に取り上げられるようになりました。
それに伴い「ギフテッド2E(以下2E)」の情報に触れる機会も増えてきています。
ただこの「2E」、いったいどんな人があてはまるのか分かりにくいという方も多いのではないでしょうか。
この記事を読んでいただけると、
- 「2E」の子供とは、どういう子なのか?
- 「2E」児の具体的イメージ
- 「2E」児の困っていること
- もしわが子が「2E」だった場合、家庭で出来る子育ての工夫
について知って頂くことができます。
この記事を書いている私さとは、ASD・ADHDの特性を持つ男子学生の母で、ライターです。
息子は2Eで、現在は私立中高一貫校に元気に通学しています。
小さな凸凹ちゃんの保護者様向けに、役立つ情報発信を目指しています。
私について詳しくはこちらをご覧ください。
『2Eギフテッドとはどんな子供なのか?』
●2Eはギフテッド+発達障害
「2E」とは「twice-exceptional(2重に例外)」のことで、
ギフテッドと発達障害の特性を両方持つ人
のことを言います。
発達障害の特性を持つ人の中でギフテッドの性質を持つ人は一部であり、ギフテッドの中でも発達障害の特性を持つ人と持たない人がいます。
そもそもギフテッドとはどんな人?
ギフテッドの定義
「ギフテッド(gifted)」とは一般に、高い知能や特定の分野で優れた才能を持つ人のことを言います。
ギフテッドについて世界的に統一された基準があるわけではないのですが、一般的に
「IQが130以上あること」
「生まれつき特定の能力が非常に突出していること」
が一応の基準と言われています。
勉強とギフテッド
ギフテッドであれば勉強の成績が良いとは限りませんが、興味関心のある教科については非常に高い成績をおさめる傾向にあります。
ギフテッドの割合と学校教育
人口に対するIQ130以上の人の割合は約2%とされています。
アメリカでは、全体の約6%にあたる子供たちがギフテッド教育を受けているので、アメリカのギフテッド教育を受ける基準が、IQだけではないことが分かります。
一方、日本の学校教育の現場では、残念ながらギフテッドの支援がほとんどうけられないのが現状です。
●2E固有の生きづらさ
2Eの子供は、ギフテッドに加えて発達障害の特性も持つので、突出した部分と苦手な部分の両面に対するサポートが必要です。
ある分野では突出した才能を持つ一方、発達障害があるために苦手なことはとことん苦手で、得意と苦手の差が非常に大きくなる傾向があります。
日本では特別支援教育により、発達障害のために苦手なことは、ある程度サポートができるようになってきました。
しかし先ほどもお伝えした通り、ギフテッドに対する教育現場での支援はなく、2Eの子供はマイナス面にばかり注目されがちで、才能に気づかれることなく過ごしている場合が多いそうです。
また、非常に高い部分があるがゆえに、苦手な部分を「努力不足」や「ふざけている」と勘違いされて叱られる場合があり、知的能力が高いのに「こんな簡単なこともできないのか」と自尊心が傷ついてしまう場合もあります。
●2E児は具体的にどんな子か?
さて、お読みいただいている方の中には、
わが子が2Eなのでは?
という疑問を持って、この記事にたどり着かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここからは息子の幼少期と今の姿をお伝えすることで、2Eの子供について、具体的なイメージを持っていただければと思います。
2Eの子皆が同じ特性を持つわけではありません。
具体的なイメージを持っていただくために、あえて細かく書きました。
ご不要な方は、2E児の育て方までジャンプしてください。
<2E息子の幼少期>
育てにくい子
ASDの特性である「こだわり」が強いタイプで、自分の想定した経過で物事が進まなければ、癇癪を起したり、反抗的になっていました。
また、ギフテッド特有のOE(過度激動)だと思われますが、感情の起伏が非常に激しかったです。
療育の先生からは「指示を通すのが針の穴に糸を通すより難しい」と言われていました。
・指示が通らない
・場面の切り替えが難しい
・こだわりが強い
・人とコミュニケーションをとることが難しい
俗にいう非常に「育てにくい子」でした。
初診の段階で主治医から「検査はこれからですが、発達障害があります。アスペルガータイプかな?」と言われました。
自分が納得しないと大人の言うことを聞きませんでした。
納得するまで説得するのがとても大変だったので、子育ては忍耐が必要。
1つ1つの行動に時間がかかりました。
<高IQとは思っていなかった>
3歳で受けた新版K式発達検査では、DQ90。
幼少期は、IQや言語理解が非常に高いことについて親は気づいていませんでした。
質問しても答えないことが多かったので、「言葉が理解できないから答えないのかな?」と思うこともありました。
ですが実際は、質問を理解できないのではなく、「聞いていない」あるいは、「理解していても答えたくない」状態だったようです。
主治医からは「この子は解っていないようで、言葉をよく理解しているから。」
療育の先生からは「とても頭が良い子ですよ。」
と言われましたが、私たち親にはわかりませんでした。
<現在の息子の様子>
WISCの数値が落ち着く
WISCの4つの指標は
・言語理解150台後半
・知覚推理120台
・ワーキングメモリー120台
・処理速度110台前半
で、4指標の高低差が非常に大きい結果でした。
ここ6、7年は、WISCの数値に変化はなく、この数値で落ち着いたのだと思います。
全IQは136~140あたりです。
育てにくさが減る
幼少期は、子育てが大変だった息子ですが、現在はダメなことは注意すれば聞きますし、外出先で困るようなことはなくなってきました。
成長により折り合いがつけられる部分が増えたのだと思います。
集団行動は好きではない・人間関係は苦手
集団行動は今も得意ではないようで、学校行事は気が重いそうです。
学校では、一緒に遊ぶ子はいても親友はいません。
特に元気がよくやんちゃなタイプの子を「精神年齢が合わない」と言って嫌います。
本人にも、自分のことを話しすぎてしまう、相手の立場に立つのが苦手、などコミュニケーションには多くの課題があります。
凸凹に気づきつつある
苦手なことについて壁にぶつかり、「どうしてできないんだ。」と落ち込むこともあります。
ある意味自分の苦手を把握しつつあるのだと思います。
「苦手な分野だから、ここは最低限のことをササっとやってしまおう。」と割り切ったり、人に助けを求められる部分もあります。
勉強
勉強(英数国理社)は基本的にできる方です。
得意科目(英・理)が突出しており、あまり得意でない教科と得意な教科の差が激しいです。
副教科(図家技体)は総じて苦手です。
『2E児の育て方』
2Eの子供は、「二重の意味で例外的」となれば、
子育てのハードルが上がるのでは?
「発達障害の子育て」「ギフテッドの子育て」でさえマイナーで情報を集めるのが難しいのに、二重に例外なんて…
と戸惑いを感じる方のために、2E育児の基本的な考え方をご紹介します。
2Eの子への教育で基本になるのは、
「得意なことを伸ばし、苦手なことは大きな障害にならないようサポートする」
という考え方です。
発達障害を持つ子の育児でも、よく聞く考え方ですね。
●2E育児は保護者への負担が大きい
ギフテッドのところでご紹介した通り、日本の学校では「得意を伸ばす」教育はあまり期待できません。
日本の教育では、できない子供の底上げをして、一定レベルの教育水準を保つことに重点を置いているからです。
「得意を伸ばす」ことは、日本では保護者の力量に任せきりの状態になっており、
・保護者がその子の強みに気づく
・保護者が才能を伸ばせる指導者・環境を探す
ことが必要です。
ですが、通常の保護者は教育について知識もありませんし、ましてギフテッドの才能を伸ばす方法なんて知る由もありません。
発達障害への対応だけでも大変なのに、得意を伸ばす対応なんて、どうすればいいの?
発達障害の環境調整が、保護者の理解があれば家庭で可能であることと同様に、工夫次第で2E育児の「得意を伸ばしつつ、苦手をサポートする」ことも可能になってきます。
具体的にはどのような方法でしょうか?
専門家の指導の下、ずぼらな我が家でもできて、効果的だった取り組みをいくつかご紹介します。
●家庭で出来る2E育児の工夫
①知的好奇心を刺激して得意を発見・深堀り
・博物館や科学館、美術館などに一緒に行く。
・色々なテーマの映画や本に触れられるようにする。
・大学や企業などが主催するイベントに参加する。
②学校の外にこそ広い世界があることを知らせる
・年齢が違う人、学校外で自分が所属できるグループを見つける。
(趣味のサークル、習い事、ボランティア活動など、オンラインも可)
・学校外のコンテストに出場する。
・検定を受ける、資格を取る。
③凸凹にあった学習環境を整える
・得意なことは学年の学習範囲で制限をせず、積極的に勉強してみる。
(ネット、本、YouTubeなどを活用)
・苦手なことについて把握させ、切り抜ける方法を一緒に考える。
④子供の世界の理解者になる
・レベルが高すぎる話、マニアックすぎる話は、同年代の子供には理解してもらえないので、保護者が話し相手になれるようにする。
・話について行くことが難しい場合でも、話を聞く姿勢を見せる。
⑤心身の安全基地を家庭に作る
・外では色々な生きづらさを感じている分、家庭は居心地よく、落ち着いて過ごせるようにする。
・睡眠・食事を十分にとり、体調を整える。
<我が家の場合>
息子は元気に学校に通っていますが、基本的に集団行動が好きではありません。
長い休みが終わることには決まって「あー、学校始まるの嫌だな。」と言います。
先日は「たとえ家がゴキブリだらけでも、家の方が居心地がいいな。」と言っていました(いつも表現が独特すぎて面白いです笑)。
家や家族を好きでいてくれている…という意味では、成功しているのですが、そこまで学校が嫌なのか…と、不憫にもなります。
親の方からは「学校に行きなさい」と言いませんが、自分で判断して学校に行っているので、本人が休みたいと言うときは休ませてあげています。去年の欠席は年間で12日でした。
まとめ
色々と具体例をあげましたが、一番大事なのは、「心身の安全基地を家庭に作る」こと。
安心して休ませ、心身のコンディションを整えることです。
心身のコンディションが整わなければ、得意を伸ばすことも苦手をカバーすることも難しくなるからです。
その上で「良き理解者になる」ため、子供の話を聞く姿勢を示すこと。
親子の信頼関係が強くなり、自己肯定感を保つ観点からとても大切です。
通常の育児の基本的な話で、なんだか少し拍子抜けした方もいらっしゃるかもしれません。
私もこの話をベテランの療育の先生から、「一番大事なこと」として伺ったときは、
え?そんなこと?もっと専門的なことを教えてくれるのかと思った…
というのが正直な感想でした。
ですが、これをいつも基本に子育てをしていると、やり過ぎたり道を外れることがありませんし、肩に力が入りすぎてしんどくなることもありません。
いかがでしたか?
これからも幼い凸凹ちゃんの保護者の方に向け、役立つ情報を発信できればと思っています。
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最後まで、お読みいただきありがとうございました。