<2024年3月更新>
通常学級と支援学級の違いは何?
発達障害を持つ子は、通常学級にどのくらいいるの?
通常学級か支援学級か…どんな基準で決めればよいのかわからない。
通常学級(普通学級)か?支援学級か?
小学校入学が近くなってくると、悩んでいらっしゃる親御さんの声を多く聞きます。
この記事を読んでいただけると
について知ることができます。
この記事を書いている私さとは、
- ASDとADHDの特性を持つ男子学生の母でライターです。
- 息子は小学校6年間、通常学級に在籍。
- 学校の先生とは6年間しっかり連携をとって、息子の学校生活をサポートしていただいたおかげで、小さなトラブルはありましたが、穏やかに6年間小学校生活を過ごすことができました。
- 通常学級に入ってからの学校との連携・息子の成長の様子を、療育施設の依頼を受けてお話しさせていただく活動もしています。
私たちについて詳しくはプロフィールをご覧ください。
お子さんに合った環境を選んで、楽しい小学校生活を送ってくれるよう、サポートしていきましょう!
1 通常学級(普通学級)の発達障害を持つ子の割合
文部省が行った調査(「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)」)によると、
小中学校の通常学級に在籍する生徒のうち「学習面又は行動面で著しい困難を示す」生徒の割合は、8.8%にのぼることがわかりました。
(このうち、学習面で著しい困難を示す生徒 6.5%、行動面で著しい困難を示す生徒 4.7%、学習面と行動面ともに著しい困難を示す 生徒 2.3%でした。)
この調査は、担任の先生等に行ったものであり、「発達障害のある児童生徒数の割合を示す
ものではなく、特別な教育的支援を必要とする児童生徒数の割合を示すもの」なので、発達特性を持つ子の割合そのまま、というではありませんが、35人学級であれば3人ということになります。
周囲からわかりにくいタイプの子やグレーゾーンの子も含めると、実際はもう少しいるのかもしれません。
2 通常学級(普通学級)と支援学級の比較
通常学級
通常学級は、皆さんご存じの通り、たくさんの生徒に対し先生一人が授業を行う一般的なクラスです。
改正義務教育標準法(公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律)により、現在は段階的に1クラス40人から35人編成に変更されています。
令和6年度以降は小学校5年生以下は35人編成ということになります。
通常学級のメリット
- 社会生活により近い環境で過ごせる
- クラスメイトの数が多いので、様々な子供に触れることができる
- 自分の得意・不得意を他人との比較で知ることができる
- 集団で様々な活動を行う中、役割を与えられ達成感が味わえる
- 合理的配慮が義務化されている(どの程度配慮してもらえるかは学校との相談による)
通常学級のデメリット
- 集団での一斉指導なので、勉強について行けない場合がある
- クラスメイトとの人間関係がうまくいかず、孤立してしまうことがある
- 担任の先生が発達障害に対する理解が不十分、あるいは手が回らず、十分なサポートができない場合がある
- 他の子と比べてしまい、自己肯定感が下がることがある
- 保護者のサポートが大変な場合がある(宿題のサポート、人間関係のトラブルなど)
支援学級
支援学級は通常の小学校内にある特別な学級で、特別支援学校とは異なります。
1学級あたり8名が標準ですが、実際の1クラス当たりの全国の平均は3名なので、かなり少人数の学級が多いです。
発達障害以外にも、発達障害を含まない知的障害や、肢体不自由、身体虚弱などの子供も在籍しています。
特別支援学級では、一般の学習指導要領ではなく特別支援学校の学習指導要領が適用されます。
個々の特性に応じたカリキュラムで勉強することができます。
支援学級のメリット
- 学習面のサポートが手厚い
- 苦手なことがあっても個別に対応してくれるので、自己肯定感が下がりにくい
- 先生が発達障害に対して理解がある
- 安心して過ごせる居場所になる
支援学級のデメリット
- 通常学級の子供と関わる機会が減ってしまう
- 苦手な科目は学習進度が遅くなる(→通常学級に戻りにくくなる)
- 集団の中で協力したり・役割を与えられたりする機会が少ない
- 進学先が狭められる可能性がある
(特に中学生は支援学級の成績が内申点に反映されないので注意が必要です。)
- 支援学級の担任であっても、高い専門性があるとは限らない
(これは意外に思われる方も多いかもしれませんが、支援学級の子のお母さんからよく聞く話です。前年まで通常学級の担任だった先生が、支援学級の担任になったりするので、やむを得ないのかもしれません。)
通級指導教室
基本的には通常学級で過ごし、週に何時間か通級指導教室に移動して、それぞれの困り事や課題に合わせた支援・指導を受けます。
必要な支援や指導の内容が個別で変わるため、障害の種類によって教室も複数に分かれています。そのため、通っている学校に適した通級指導教室がない場合もあり、たとえば同一市区町村内の他の学校に行って通級指導教室に通うということもあります。
<我が家の場合>
息子の学校には通級指導教室がありませんでした。
息子は生真面目な面があり「病気でもないのに欠席したくない」と言って、通院にも苦労する様子だったので、週に一回午後に学校を抜けて、他の学校に通級に行くのは諦めました。
2 通常学級在籍の目安
判断基準・判断方法は自治体による
通常学級と支援学級のどちらに在籍するのか、という判断基準や判定方法は地域の教育体制の整備状況などにより異なります。
就学相談などを通じ子供本人や保護者の意志を尊重しながら、市区町村の就学支援委員会が総合的に判断し、教育委員会が最終的に決定し通知を出します。
判断方法については、地域により異なりますので、お住まいの自治体にお問い合わせください。
保護者が選択する際の目安
保護者の方が通常学級か支援学級かを考える際の一応の目安としては、以下のような基準が考えられます。
- 45分間、落ち着いて授業がうけられるか?(座っていられるか、大声で話したり授業の妨げになることがないか)
- 勉強の遅れが出ないか?(主に入学時と3年生以降)
- クラスメイトとコミュニケーションがとれるか?
①45分間落ち着いて授業が受けられるか
1年生のはじめは、健常児でも授業を落ち着いて受けることが難しい子はいるので、徐々に慣れていくことができれば大丈夫です。
学年が上がっても難しいようであれば、専門家への相談や支援学級への転籍を検討する場合も出てくるでしょう。
この点が難しいと、本人の学習だけでなくクラスメイトの学習にも影響があるので、苦情が出やすいです。
以下は現役教員の方のお話です↓
「周りの友達にすぐに手が出る。授業中にうるさくて周りの子が勉強できない。主にこの2つが通常の学級にいられなくなる原因になっています。」
出典 東洋経済ONLINE【発達障害の子どもを排除する厳格な「学校ルール」】
②勉強の遅れが出ないか
入学後すぐに読み・書き・計算などに難しさが出る場合もありますが、特に注意が必要なのは、3年生以降です。
抽象的な思考・理解が求められる単元が入ってくる頃に、勉強につまずく子が一定数います。
そのため3、4年生以降に「勉強についていけなくなった」という理由で支援学級に転籍する子がいるのも事実です。
入学前に保護者が予測することは難しいので、発達検査や本人の特性に基づいた専門家のアドバイスが参考になります。
③クラスメイトとコミュニケーションが取れるか
「親友ができる」「友達が多い」という必要はありません。
クラス内での話し合いに参加できる、役割分担ができる、困ったことがあったら人に助けを求められる…そういったことができると安心です。
ただ、これらは学校の中で練習していくので、通常学級にいると大きく成長する部分でもあります。
<障害がある子は全員支援学級にいくべき?>
いまだに誤解があるのですが、発達障害の診断があったからと言って、即支援学級に決まるわけではありません。
実際、息子の通常学級のクラスには、自治体の療育機関で一緒に療育を受けた子が3人いたこともありました。それ以外にも特性がありそうな子が2人くらい在籍していて、発達障害を持つ子が通常学級に在籍することは珍しくありません。
発達障害があっても、大きなトラブルもなく6年間を過ごしていく子が通常学級にはいます。
「発達障害があるのなら、支援学級に行くべき」という極端な意見をときどき見かけます。
このような意見は、
- 発達障害を持つ子にも様々な特性・程度があること
- 成長して落ち着く子も多いこと
- むしろ通常より優れた才能を持つ子がいること
- 発達障害があっても将来的には社会に出て一般就労する子供がたくさんいること
- 健常児も多様な人に接する経験が社会に出て役に立つこと(もちろん健常児にとって過剰に負担になることや、辛い体験になることは防がなければなりません)
以上のようなことを見過ごした意見であり、発達障害についての理解が足りないのだと思います。
ただ、発達障害について理解のない人は社会の中に多くいて、保護者の中でも一定数います。
そういった保護者が必要以上に批判的・差別的な態度をとってきた場合には、なるべく直接を対応せず、担任の先生や学年主任・教頭先生を介してトラブルを解決するなど、冷静に距離をとることが必要です。
一方で、クラスメイトに過度に辛い思いをさせたり、暴力をふるったり、危険な目に合わせるような場合には、「発達障害があるから」という言い訳は通用しないということも覚えておかなければいけません。
そのような状態では、本人も居心地が悪く、周囲から理解されずに辛い思いをする場合もあるので、親が通常学級にこだわりすぎないこと、早めに学校や専門機関に相談して対策を考えることも大事だと思います。
3 通常学級か支援学級か判断の際にすべきこと
①子供の得意・不得意を理解し、どんなサポートが必要か考える
お子さんの特性を理解し、得意なこと・不得意なことを把握できるようにしましょう。
こでまで受けたWISCなどの知能検査や医師・心理士・療育の先生の助言も大きな手掛かりになります。
どのようなサポートが必要なのかが具体的に分かると、お子さんが学校に入ってから安心ですね。幼稚園や保育園の生活で役に立ったサポートを先生から聞いたり、医師や療育の先生にどんなサポートが必要になりそうか意見を聞いてみるという手もあります。
学校に配慮をお願いする際は、保護者からの意見より「専門家からの助言」としてお伝えする方がスムーズに考慮してもらえる場合があります。
WISCについてはこちらの記事もどうぞ↓
②情報収集をする
学区の小学校には発達障害に対応した支援級があるでしょうか?
通級指導教室は学校内にあるでしょうか?
通常学級の1学年当たりの人数はどのくらいでしょうか?
支援学級にはどのくらいの人数の子供が通っているのでしょうか?
同じ特性の子供でも、学校の環境によって通常学級か支援学級かの判断が変わってくる場合があるでしょう。
- 先輩保護者に聞く
- インターネットで調べる
- 自治体へ相談してみる
- 学校見学の際に直接聞いてみる
といった方法で、判断に必要な情報を集めましょう。
③学校を見学する
情報収集をしたら、可能な限り見学に行って実際の様子を確認するようにしましょう。
通常学級・支援学級の両方を見させてくださいとお願いをしておき、お子さんと一緒に実際の様子を見ることができるといいですね。
少し気を付けていただきたいのは、公立小学校の場合には先生の転勤や移動が頻繁にあるので、「校長先生の方針が良い」「支援学級の先生のサポートが素晴らしい」と思っても、お子さんが入学する年にそのポジションにその先生がいるとは限らない、ということです。
実際、支援学級の先生は入れ替わりが頻繁で、通常学級の先生が次の年は支援学級…という場合やその逆もとても多かったです。
④子供と相談する
見学をして、お子さんに学校の情報を伝えたうえで希望を聞いてみると、本人の納得感が得られます。
見学に行くと、「○○学級(支援学級の名前)の方が静かで安心できた。」「1年2組の方がお友達が多くて楽しそう。」など、その子なりの感想を持つことが多いので、親子で話し合い、納得したうえで決めることができるといいですね。
いかがでしたか?
この記事がお子さんの進路選択のお役に立つことがあれば、とても嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。