<2024年3月更新>
通常学級に入ると、先生にサポートしてもらえないのかな?
発達障害を持つ子が通常学級に入った場合、保護者が気を付けることは?
先生とはどのように連携をとればいい?
「通常学級に入ると、同級生から良い影響を受ける」というのはホント?
通常学級(普通学級)か支援学級か…
検討されている方の中には、お子さんが通常学級でやっていけるのかわからない、という不安を抱えていらっしゃる方も多いと思います。
この記事をお読みいただくと、
について知って頂くことができます。
経験談を交えて、具体的にお話ししていきますので、通常学級で過ごす発達凸凹さんの様子をイメージしていただきやすいと思います。
この記事を書いている私さとは、
- ASDとADHDの特性を持つ男子学生の母でライターです。
- 息子は小学校6年間、通常学級に在籍。
- 学校の先生とは6年間しっかり連携をとって、息子の学校生活をサポートしていただきました。
- 通常学級に入ってからの学校との連携・息子の成長の様子を、療育施設の依頼を受けてお話しさせていただく活動をしています。
私たちについて詳しくはプロフィールをご覧ください。
1 通常学級(普通学級)でも支援をしてもらえるのか
●通常学級でも支援は可能だが限界がある
2016年の障害者差別解消法により、発達障害のあるに子供に対して合理的配慮を行うことが、公立の学校に義務付けられました。
2024年4月には障害者差別解消法の改正により、私立の学校や企業にも義務付けられます。
障害に基づく学びにくさがあり支援が必要な場合には、公私立問わずサポートをしてもらえるということになります。
ただ、合理的配慮の内容については個別性が高く、どのような配慮が必要かは、特性だけでなく学校の人員の配置や設備などの環境など学校側の支援体制にもよります。
また、その配慮を実施することで負担が過大になる場合には、その配慮を義務付けられるわけではありません。
実際には、担任の先生に過大な負担となる場合や、他の生徒の学習の妨げになるような場合は難しいです。
先生に相談した場合、難色を示される…という場合も実際にはあるようです。
合理的配慮を先生に依頼する際は、
「○○をしてほしい」と要求するより、
「~で困っているので、相談したい」という相談の姿勢
で臨む方が、上手くいきやすいと感じました(この点について詳しくは後章の「相談するという姿勢で」で説明していますのでご覧下さい)。
●通常学級での加配の付き方
我が家の場合、入学前の教育相談では、以下のような話をされました。
「通常級でも加配の先生(息子の小学校では「サポートの先生」と言っていました。)はいますが、学校に数人しかいません。
ずっと1人を支援できるわけではなく、あくまでその場面、場面でサポートするような感じになります。
例えば『○○クラスの算数の時間に入る』『△△クラスの体育の前の着替えに付き添う』というふうに、特に苦手な場面がある場合に、その児童を支援するような感じです。
また、サポートが必要な場合でも、他に、より支援が必要な児童がいる場合には、そちらにサポートの先生が行くのでみてもらえない場合もあります。」
実際の学校の様子を見ていると、困っている様子が目立つタイプ、他児に迷惑をかけたりトラブルになるタイプの子には先生が付きやすいと感じました。
息子の学校では、特性のある子が1クラスにまとまっている年がありました(発達障害をオープンにしていなくても、療育がかつて同じだったりしてわかりました)。
理由を学校に確認をしたわけではありませんが、1つのクラスにまとまっている方がサポートの先生が付きやすいからかな?と思いました。
学年が上がれば、サポートの先生の支援は不要になる子が多く、また低学年の子に手がかかるので、高学年の教室でサポートの先生を見かけることはほとんどなくなりました。
2 通常学級(普通学級)に在籍するなら心掛けたいポイント
●暴力や暴言、嫌がらせは許されない
クラスメイトに対する暴力、ひどい暴言、繰り返し嫌がらせをするような場合には、「発達障害があるから…」ということを言い訳に許されるものではありません。
クラスメイトやその保護者の立場に立てば、相手に障害があろうとなかろうと、痛い思いをしたり、傷つけられたことには変わりがないからです。
通常学級在籍ならば、発達障害があることをクラスメイトにオープンにしていない場合もあるでしょう。
暴力や暴言が続くような場合には、環境に合っておらず、子供自身がクラスで居づらい思いをすることになります。
このような場合には早めに学校と連携を取り、対応する必要があります。
●通常のトラブルなら先生の「橋渡し」が有効
発達障害を持つ子は、コミュニケーションが苦手であったり、事実の捉え方に偏りがあったりすることから、クラスメイトとトラブルになる場合があります。
そのような行き違いやトラブルで、先生の理解がある場合には、
- トラブルの背景にはその子なりの理由があること
- 意地悪で言ったのではなく困っているのだということ
などを上手に説明してくれ、発達特性のある子とクラスメイトとの「橋渡し」をしてくれる場合もあります。
<息子の場合>
息子の言動がクラスメイトに誤解されたり、息子が相手の意図を勘違いすることが時々ありました。
そういう場面でも、先生の「橋渡し」のおかげで同級生に理解してもらえたことが多く、息子もトラブルになったときは、先生の忠告には耳を傾けるようでした。
結果、あまり大きなトラブルはなく通常学級で6年間過ごすことができました。小学校の担任の先生方には本当に感謝しています。
●保護者が精神的に楽なのは支援学級かも…
正直なところ支援学級より通常学級の方が、親は心配が多く、辛い思いをするのかもしれません。
親御さんがどこまで大きく構えていられるか…もポイントになってきます。
<我が家の場合>
私は「息子がクラスメイトに迷惑をかけているのではないか」という思いが強く、「学校でお友達に、○○しちゃだめだよ。」と息子をコントロールしようとしていことがありました。
「□□の場合は△△と言えばいいんだよ。」と教えれば解決するのでは…と考え、療育の先生に相談したこともありました。
療育の先生の答えは…
「この子の場合は、○○すべき、△△と言うべきというのは、大体わかっている。でも自分のやりたい、言いたいことの方がそれより優先になる。○○すべきということを教えても机上の空論で、実際の場ではできない。」ということでした。
実際、「○○しちゃだめだよ。」と私に言われても聞き入れられなかったことを、好きなお友達に「やめて。」と言われると即やめたそうです。
「○○すると、嫌われるからやめよう。」と自分で納得した動機があったのだと思います。
私がコントロールしようとしてもあまり効果はなく、お友達とのやり取りの中で、自分で気づくことが大事なのだと実感した出来事でした。
(特性による違いが大きいので、発達特性のあるお子様すべてに当てはまるわけではありません。)
●通常学級の中でどのように成長するか
以下の記事は、現役の教員の方が書かれたものです。通常学級の中で子供がどのように過ごしていくのか、参考になるので是非ご覧ください。
「一緒に過ごしていれば、喧嘩もするし、嫌なこともある。もちろん、暴力や暴言などで理不尽に嫌な思いをさせてしまった時は厳しく指導し、やられた子へのフォローが欠かせません。
そうして周囲と接する中で、徐々に手をすぐに出さない接し方を学んでいきます。ある程度の年齢になると落ち着くことも多いので、その子の成長を待ってあげることが大切です。
子どもは優しくて、柔軟です。一緒の空間で過ごしていると、『あいつは授業で邪魔ばっかりするけど、忘れ物をした時は貸してくれて優しいんだよね』と、多面的に見るようになります。その子も一人の人間だということが理解できるんです。
しかし、自分の周囲で障害やハンディキャップのある人を知らないで育ち、あるとき突然出会ったら理解できるでしょうか。ともに育たない学校の現状は、社会をますます分断してしまうのではないかと危機感を感じています。」
出典 東洋経済ONLINE【発達障害の子どもを排除する厳格な「学校ルール」】
こんなふうに考えてくださる先生のもとで成長することが出来たら、とても幸せですね。
3 通常学級(普通学級)での先生との連携の取り方
通常学級に在籍することが決まって入学したら、もちろんそこがゴールではありません。
通常学級であれば低学年のうちから親の送迎は不要ですが、勉強面に関しては通常が級の方が親の手がかかる、というケースも多いです。
●まずは入学式
卒園式は入念に予行演習をするのに、入学式は実際の会場で予行演習がなく、ぶっつけ本番です。
通常は6年生がお世話をしてくれるし、入学式は練習をしなくても問題ないのだと思いますが、「初めての場所や経験が苦手」「感覚過敏がある」など心配な場合は、早めに小学校に相談をしましょう。
入学式の会場を下見させてもらったり、予行演習をさせてもらえる場合があります。
<我が家の場合>
学校見学の際、「初めて接する人や初めての経験が苦手なので入学式が心配なのですが。」と相談したところ、入学式前日に設営が完了した会場で、1人リハーサルをさせていただきました。
教頭先生と当日司会の先生、学年担当の先生方が様子を見てくださり、とても心強かったのを覚えています。
●「要求」ではなく「相談する」という姿勢で
小学校の先生は大勢の生徒を一人で担当しながら、事務作業や保護者対応をこなし、毎日本当に忙しそうです。
合理的配慮は義務ではありますが、個別対応をしてもらうような場合は、感謝の気持ちを伝えることも大事です。
「お忙しい中ありがとうございます。」「お手数をおかけして…」というお礼の言葉も大切ですが、「~の対応をしていただいたおかげで、○○になって、子供がとても助かりました(□□のように変化しました)。」など、何か対応していただいた効果をお伝えするのは、先生も嬉しいそうです。
また、何らの配慮をお願いしたいときは、
「~をしてください。」
と要求するよりも、
「〇〇で困っているので、ご相談したいと思って…」
という相談の仕方をするということが大切なのだそうです(療育の先生談)。
理由は、実際に子供の様子を学校でを見ている先生が、クラスの中で実際にできる対応を考えてくれる方が現実的だからです。
実際にこのように相談をしてみると、私が考えた対応より、もっと踏み込んで対応してくれる場合の方が多かったです。
この相談の中で専門家の意見をお伝えできるといいですね。
●最大限に協力する姿勢
反対に、先生から保護者に対して「宿題をフォローしてほしい」「物を無くしたので用意してほしい」など、お願いされる場合があります。
保護者の方も時間的に厳しい場合など限界があると思いますが、可能な範囲でなるべく協力する姿勢を示す方が、先生と協力しやすくなると思います。
「共に子供の成長を助けてほしい」という姿勢を示し、協調体制を築きましょう。
4 先生や同級生に障害について話すか
以下は私の意見なので、もちろん違う考え方もあると思います。
先生に話すことは必須。
クラスメイトや保護者には、特別な場合以外は話さなくてもよい。
というのが6年間、通常学級に息子を通わせてみた上での意見です。
クラスメイトに話さなくてよい理由は
- 障害を理由にからかわれたり、いじめにより自尊心を傷つけられる可能性がある
- 入学までの本人に対する障害告知が前提となり、障害告知には早い場合がある
- 他のクラスメイトに対して迷惑をかける場合は、対応法を伝えたり、理由すことは有効だが(例「急に手を掴まれるとびっくりするから、まず目の前で『○○しよう』と伝えてください」など)、障害名などを伝えても相手に知識がないので意味がない
- 将来、健常児と同じ学校に進学し、その先一般就労を目指す場合、まずはクローズドで就労する人も多く、そのような場合にはどの範囲に障害を明らかにするかは、本人が大人になって判断した方が良い場合もある
確かに保護者は、障害名を周囲の人に知ってもらった方が楽です。
「この子はわがままや意地悪で言っているのではない。」「保護者のしつけが悪いのではない」ということを理解してもらえる場合もあるからです。
特に一見して障害があると分からない子は、周囲の無理解から責められ、親子にとって大きな苦しみになることがあります。
ただそうだとしても、障害について知らせる範囲を考える時には、大変ですが親よりも子供の利益を中心に考えた方が良いと思っています。
一度周囲の人に知られると元の状態には戻せませんから、オープンにした場合のメリットとデメリットを比べて、慎重に考える必要があります。
特にSNSなどで実名を公表する際は、ネット上に名前と障害が残り続けますから、将来の就職や結婚への影響まで考える必要があります。
5 通常級学級だとクラスメイトから良い刺激を受ける…というのは本当か?
結論から言うと、年齢によって違いますし、子供のタイプ(感じ方)にもよります。
良い刺激を受けることもあれば、マイナスになるような刺激を受ける場合もあります。
一概に良い刺激を受けるとは言えないので、過度に期待しない方がよい…というのが実際のところです。
●低学年の間は…
困っているとクラスメイトに助けてもらったり、その場にふさわしい行動を周囲の子から学び取ってまねをするといったことも期待できます。
ただ、子供によっては早いうちから自分と周囲の子との違いが気になったり、居心地が悪い思いをする場合もあります。
<我が家の場合>
低学年の頃は、友達から色々なことを学んでいる様子でした。
小学校入学当時は、なかなか謝ることができなかった息子ですが、お友達と一緒に先生に叱られた際、すぐに謝るお友達を見て、「悪いことをしたと思ったら、すぐに謝る方がよい。」ということを学んだ様子でした。大人が「謝りなさい。」と言っても、なかなか受け入れられないので、お友達のパワーはすごいと感じました。
●高学年になると…
だんだんと友達を選んで気の合う子と付き合うようになるので、発達特性があり個性的な子は敬遠される場合があり、仲間に入れない場合があります。
この頃には、周囲と自分との違いをより意識するようにもなり、孤独感を感じる子がいることも事実です。
自分と似たようなタイプの子や趣味の合う友達を作りたいと思えば、意外に支援学級の方が見つかりやすい…という場合もあります。
いかがでしたか?
今回、通常学級への入学を検討している方、まだ迷われている方のお役に立てることが少しでもあれば、嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。