発達障害の子「運動会に参加しない・辛い・踊らない」理由と対処法<後編>

学校

<2025年5月更新>

本記事は

発達障害の子「運動会に参加しない・辛い・踊らない」理由と対処法<前編>
「ダンスが苦手」「当日、集団行動がうまくできない」「運動会を休みたがる」運動会が近づいてくると、色々出てくるお悩み…。そんなお悩みを解決します。

こちらの記事の後編です。

 

本記事を読んでいただくと、

  • 発達障害を持つお子さんの運動会が苦手・辛い場合に保護者ができる対処法
  • 運動会の練習や本番に「参加したくない」場合、どうすればよいか

これらの点について知って頂くことができます。

 

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●「運動会が苦手」へのサポート法

<前編>では発達特性を持つ子が「運動会を苦手」とする理由について見てきました。

 

こちらの後編では、運動会に向けての具体的なサポート方法について、考えていきたいと思います。

 

保護者が気を付けたいポイント

発達特性を持つ子の運動会をサポートするために、保護者が取れる行動として、以下のようなことが考えられます。

  1. 子供の体調を整える、リフレッシュさせる
  2. 子供から運動会について話を聞き、気持ちを受け止める
  3. 子供が困っている様子や苦手なことがあれば先生に伝えて相談する
  4. 先生に子供の特性に合ったサポートをお願いする

 

サポートするにあたっては、気を付けるとサポートがスムーズにいくポイントがあります。

 

・サポートを決めるのは先生の役割

上にあげた1から4のうち、4の「サポートを先生にお願いする」ことについては、注意が必要です。

どのようなサポートを行うかは、子供の様子や人員の配置、種目の内容を見ながら先生が決めるので、保護者が具体的なサポートをお願いしたとしても、そのサポートをするかどうかは先生の判断次第ということになります。

 

個人的な経験からは、上にあげた3の「困っている様子や苦手なことを先生に伝えて相談」をした後は、先生に任せて子供の様子を見守るという流れになるかと思います。

 

サポートをお願いする際には、前年の運動会までにサポートしてもらってうまくいったことや主治医や療育の先生など専門家のアドバイスをもとに伝えると、サポートの中に取り入れてもらえる可能性が高まります。

  

・気持ちを受け止めるだけで解決する場合も 

「うまくできなくて悔しい思いをした」

「毎日しんどいけど練習を頑張っている」

そんな気持ちを、保護者の方に受け止めてもらえるだけで、お子さんが頑張れる場合もあります

まずは子供の気持ちを否定せず、しっかり受け止めてあげることも大切です。

  

サポート① 苦手なことを先生に相談

前編(運動会が苦手な理由①)でご紹介した通り、運動会のダンスや組体操が苦手な理由が発達性協調運動障害にある場合、練習によって改善することはあっても、劇的に上手になることはありません。

 

運動会の練習が始まる前(ダンスの振りを先生が考える頃)の段階で、どんなことが苦手なのか、早めに先生にお知らせして相談しておくことが有効です。

 

必ずやってもらえる…というわけではありませんが、

  • 簡単なパートを割り当ててくれる 
  • 「この振りつけが難しい人はこちらでも大丈夫」という代替の振りつけを考えてくれる

という可能性もあります。

 

そして、何より大切なのが、

  • 「まじめにやっていない」「やる気がない」と怒られるのを防ぐ

 

 

また、「ダンスが苦手で他の子にからかわれる。周囲の目を気にしている。」という相談をしておけば

  • 同級生がダンスのことでからかったりしないよう、気を配ってくれる

ということも期待できます。

 

その他にも、お家で動画などを見て一緒に練習する、という方法もあります。

ただ、お子さんは「練習が辛い」と思っているので、お家での特訓はあくまで本人が「やりたい」「上達したい」という意欲がある場合にとどめておきたいものです。

  

サポート② 視覚支援

例えばダンスであれば、このようなサポート方法が考えられます。

  • ダンスの振り付けの動画を早めにもらう
  • 並び方や体形移動の図を描いてもらう
  • 立ち位置にしるしをつけてもらう
  • 準備や並び方なども含めた詳細なプログラムを作る

 

サポート③ 「見通しが立たない」には予行演習と過去の動画

<前編>の運動会が苦手な理由4でご紹介した、見通しが立たないことから生ずる不安が強い場合には、本番の様子を想像しやすくなるようなサポートが有効です。

  • 前年の本番の動画を見る
  • 予行演習に参加する

予行演習は、場所や流れの確認はできるのですが、本番ではお客さんの声援や視線もあるので、本番の雰囲気とは大きく異なることに注意が必要です。 

 

サポート④ 感覚過敏はサポートグッズと静かな場所での休息を

最近では徒競走のスタートの合図を、ピストルではなく笛などに替えてくれる学校もあるので、早めに先生に相談してみるのもよいですね。

 

難しければ、ノイズキャンセラーなどのサポートグッズを使う手もあります。

競技中ははずれたりして難しいかもしれませんが、応援や待機中に使うことができれば、不安や疲労の軽減に役立ちます。

 

出番の合間には、静かな人の少ない場所で休ませてもらうと、楽になる場合もあります。

事前に先生に相談しておき、「ここに避難すれば大丈夫」という場所を確保できれば精神的に落ち着く場合が多いです。

 

  

●どうしても運動会に参加するのが嫌な場合、欠席はアリ?

ここまで、運動会でのサポートをご紹介してきましたが、色々と周囲がサポートをしても

運動会に参加したくない!

とお子さんが言う場合には、どのように対応したらよいのでしょうか。

 

★まずは運動会に参加したくない気持ちを受け止める

「行く」「行かない」という決定を保護者の方がする前に、

まずは「参加したくない」という子供の気持ちを受け止めることが大切です。

 

運動会に向けて練習を重ねていく中、園や学校では「運動会に向けて頑張ろう」という気運が高まっています。

お子さんは、大きな不安や罪悪感、焦りを感じているかもしれません。

勇気を振り絞って「参加したくない」と伝えているお子さんの気持ちを、一度受け止めてあげることがまずは最も大切です。

受け止めるというのは、すぐに「休んでいいよ」と認めることではありません。

「君の気持ちはそうなんだね。」と、とりあえず否定せずに思いを受け止めることです。

 

 

<気持ちを受け止めることがなぜ大切なのか>

保護者の方は「運動会に参加したくない」と言われて、ショックかもしれません。

「これから毎年欠席すると言い出したら…」などと、色々先のことを考えてしまうかもしれません(私も同じ経験があるので解ります)。

 

ただこのようなときは、ピンチのようであって実は大きなチャンスなのです

「辛いことを話せば受け止めてもらえる。」

「勇気を出して言ったことを否定せず尊重してくれた。」

「困ったことがあっても、相談すればどうにかなる。」

親子の間に、こんな信頼関係を築くことが出来たら、この先、もっと大変なことが起こっても、お子さんは親御さんに気持ちを話したり、相談しながら乗り越えていくことができるでしょう。

 

私は今、思春期真っただ中の息子を育てていますが、この「親子の信頼関係」と「困ったときに相談する習慣」にとても助けられています

 

思春期になれば、発達特性を持つ子といえども、親の手の届かない場所で活動することがどんどん増えてきます。

大学生や社会人になれば、もう親が口を出すことはほとんどできなくなるでしょう。

そんな時に役立つのが、「自分の力では対処が難しいと感じた時には親や信頼できる人に相談する」という習慣と親子の信頼関係です。

 

「運動会に参加したくない」と言われると、親も孤独で不安になります。

ですが、子供の声に耳を傾けて気持ちを受け止める、その経験が後の自分たちの背中を押してくれることにつながっています。

  

★運動会に参加したくない理由を聞く

お子さんが落ち着いた状態のときに、運動会に参加したくない理由を聞いてみましょう。

  • 何か困ったことがあるのか
  • 運動会についてどう思っているのか

お子さんの言葉を遮ったり、自分の意見に誘導したりせず、ゆっくりと聞いてあげることが大切です。

その上で、どうすればいいかを一緒に考えてあげてください。

  

★「保護者自身の」運動会に参加させたい理由を見つめなおす

運動会に参加させるかを考える際は、保護者の方ご自身が、

「どうしてお子さんを運動会に参加させたいのか」

について、見つめなおすことをおすすめします。

 

「出席するものだ」という固定概念や「ほかの保護者の目」に囚われていませんか?

最も重視すべきは、参加する子供の気持ちです。

 

確かに運動会は子供にとって良い面がたくさんあります。

  • 良い思い出を友達と共有できる。
  • クラスの団結をはかり一体感を感じられる。
  • 役割の分担の大切さ。
  • 難しいことにも頑張るチャレンジ精神

得られるものも多いでしょう。

  

ですが、それは、今年の運動会に参加しなければ、得ることができないものでしょうか?

他の行事でも得られるかもしれませんし、本人がやる気になって臨んだ次の年の運動会で得られるのかもしれません。

団結心やチャレンジ精神…などは、自分の意思で主体的に参加した場合に得られるものです。

 

以前私は、「今年の運動会を休んでしまうと、来年も休む…となるのではないか。」と心配したことがありました。

ですが、結局それは取り越し苦労でした。

子供は年々成長していきます。

種目が変わったり、成長して辛いことが減ってくれば、来年は参加したくなるかもしれません。

反対に、今年無理をして運動会に参加し、辛い思いばかりが残ると、来年からは参加できなくなるかもしれません。

来年どうなるか…は、今はわからないことです。

 

運動会は、保育園や幼稚園、小・中・高校で、合わせると15回以上もあるんですね。

息子は体育祭に参加するのも残り数回になりましたが、振り返ると1回の運動会はただの通過点にすぎません。

長い目で見れば、運動会に参加できなかったとしても、悩みを相談して、周囲の大人が味方になってくれた、一緒に考えてくれた、という実体験は、お子さんにとって大きな力になると思います。

 

参加するのか、欠席するのか、見学するのか、種目を限定して参加するのか。

ケースバイケースで簡単に答えが出ないですが、お子さんの気持ちを大事にし、必要なサポートをした上で出した結論であれば、あまり大きく道を踏み外さないのではないのかと思います。

 

 

いかがでしたか?

この記事が、少しでもあなたのお役に立てばうれしいです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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