<2024年3月更新>
学校や病院で、子供の知能検査(WISC)の受診をすすめられたけど、どんな検査なんだろう。
子供がWISCを受けたけど、結果をどのように見ればよいのかわからない。
こんなお悩みをお持ちの方はいらっしゃいませんか?
この記事をお読みいただけると、
について知って頂くことができます。
WISC‐Ⅳの結果を正確に理解して、お子さんの成長のために環境を整え、将来の進路選択をするヒントにしていきましょう。
この記事を書いている私さとは、ASDとADHDの特性を持つ息子の母親でライターです。
息子は発達検査と知能検査を計4回ほど受けましたが、最初は結果がわかりにくく、専門家のご指導のもと色々と勉強してきました。
私たちについて詳しくはプロフィールをご覧ください。
WISCとIQについては、こちらの記事もどうぞ↓
WISC‐Ⅳの概要と結果の見方
●WISC‐Ⅳの概要
現在、WISCの中ではWISCⅤが一番新しい検査ですが、現在日本で一番普及して使用されているのはWISC-Ⅳですので、この記事ではWISC-Ⅳを中心にご紹介します。
WISC-Ⅳは、5歳0ヶ月〜16歳11ヶ月を対象とする知能検査で全体的な認知能力を表す全検査IQと「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4つの指標をそれぞれ数値化した結果を得られます。
言語理解指標(VCI)
言語による理解力・推理力・思考力を見る指標です。
言葉でコミュニケーションをとり、推論する力に関する指標なので、この指標が低い子は、言語によるコミュニケーションや思考が苦手という傾向があります。
より具体的に言うと、言葉での指示が理解しにくかったり、自分の気持ちや状況を言葉で説明できずトラブルになりやすかったり…という困難が生ずる場合があります。
また、「言語理解が高い=コミュニケーション力が高い」とは言えないことに注意が必要です。
知覚推理指標(PRI)
視覚的な情報を把握し推理する力や、視覚的情報にあわせて体を動かす力を見る指標です。
新しく得た情報への対応力や解決力にも影響を与えると言われています。
この指標が低い子は、絵や図、地図から情報を読み取ることが難しかったり、文章や話の要点をまとめるのが苦手だったりします。相手の表情から気持ちを読み取ったり、整理整頓が難しいという問題が生ずる場合もあります。
ワーキングメモリー指標(WMI)
情報を一時的に記憶しながら処理する能力を見る指標です。
複数の情報を同時に処理したり、順序立てて処理したりする能力がわかります。
読み書き・計算に関係するほか、料理を作ることにも関係する能力です。また、「弁が立つ」人は、この能力が高いタイプが多いようです。
この指標が低い子は、読み・書き・計算に影響が出るほか、耳から入った情報を覚えたり、頭の中で処理したりすることが苦手な傾向があります。具体的には、口頭での指示が覚えられない、電話対応が苦手という形で日常生活に不得意が出ます。
処理速度指標(PSI)
視覚で得た情報を処理する速さを見る指標です。
単純作業をスピーディーに行ったり、細やかな作業を決められた時間内に行う能力がわかります。
この指標が低い子は、文字を書き写すのが苦手、書く時の姿勢や筆記用具の使い方がぎこちない、計算が遅い、時間内に課題が終わらないなどの困難さが生ずる場合があります。
ワーキングメモリーは聴覚的な短期記憶に関連が深いのに対し、処理速度は視覚的な短期記憶に関連しています。
<我が家の場合>
息子は、WISC‐Ⅳの4つの指標のうち、処理速度が低く(発達特性がある人の中で、最も多いパターンのようです)、今も「ノートをとる」のは苦手です。
授業をよく聞き、テストの点数が良い教科でも、ノートを取れていないので成績が下がってしまう場合があります。
「成績評価にノートを入れないでください。」とお願いすることが現段階では難しいので(それも改善されれば…と思っています。)、「努力してもノートやプリントを書けないことがあるので、ノートをとれないことを厳しく叱責することは控えてください。」と学校にお願いしています。
●「全検査IQ」「合成得点」「パーセンタイル」「信頼区間」とは?
全検査IQ
全検査IQ(FSIQ)は、これまでお話しした「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4指標の結果を合わせたものから得られる数値です。
平均を100として検査が作られているので、分布は以下の図のようになります。
全IQが85~115であれば、平均的なIQということになります。
130~ 極めて優秀 全体の2.2%
『発達障害事典』(2011年・明石書店刊)
120~129 優秀 全体の6.7%
110~119 平均の上 全体の16.1%
90~109 平均 全体の50.0%
80~89 平均の下 全体の16.1%
70~79 境界知能 全体の6.7%
70未満 知的障害 全体の2.2%
IQ130以上で生まれつき特定の能力が非常に突出している人を「ギフテッド」と言い、大体クラスに1人程度いるのではないかと言われています。
反対に、IQが70未満になると、知的障害の領域になり、
51~70 軽度知的障害
36~50 中度知的障害
21~35 重度知的障害
20以下 最重度知的障害
と分類されます。
<IQと発達障害の関係>
発達障害を持つ人は、様々なIQの層に分布しており、全検査IQが高くても低くても発達障害と診断される人はいます。
- 全検査IQが一定の数値以下 → 「知的障害」
- 4指標の数値間に差がある(得意・不得意の凸凹がある) → 「発達障害」
合成得点
WISC-IVの結果を見る際は、全IQも4つの指標もともに、この「合成得点」に注目します。
評価点の平均を100とし、その上下のばらつき(偏差)を割り出したものです。
85~115の間に、約68%の人が含まれます。
パーセンタイル
それぞれの検査項目で、100人のうち下から何番目かを示しています。数字が小さいほど水準が低く、大きいほど水準が高いということになります。
例)パーセンタイルが「5」…100人中下から5番目、上から96番目
信頼区間
数値の信頼度と、そこから推定される幅が示されています。
例えば「PSI=113、90%信頼区間、PSI=103〜119」の場合、
「検査結果は処理速度113と言う結果でその信頼度は90%。103〜119の間に位置すると推定される」
という意味です。
4つの指標の間に差があると発達障害なのか?
<結論>
4つの指標間に差(ディスクレパンシー)がある場合、それだけで発達障害と断定されるわけではありませんが、差が大きければその可能性は高まります。
その場合にも医師が日常生活・社会生活に著しい不適応を起こしているかなどを考慮して総合的に判断します。
●指標間の差だけでは決まらないけれど…
発達障害の診断は児童精神科医などの医師がおこないます。
診断は、実際の生活にどの程度困難があるかを伴わせて行われるため、医療機関でWISCなどの知能検査を受けても、その結果だけで発達障害と断定するわけではありません。
ですが、4つの指標の間の差が大きいほど、一般的には本人の困り感が強くなったり、社会的に困難な場面が出やすいので、発達障害の可能性を考えるようになります。
●「差が大きい」の目安
発達障害が疑われる「指標間の数値の差が大きい」というのは、一般的に15以上が目安とされているようです。
ただ15以上差があればそれだけで発達障害というわけではなく、15以上差ある人でも、生活上困った状況があまりなければ、発達障害の診断に至らない場合もあります。
また、全IQの高い人は、指標間に差が生じやすいので、差が15以上あっても発達障害とはされない場合があります。
全IQが130以上あるギフテッドで、かつ発達障害の特性を持つ人を2Eギフテッドと言いますが、2Eギフテッドで高い部分の指標が突出しているような場合には、低い指標との差が特に大きくなりやすいです。
<我が家の場合>
息子は全IQが138前後で2Eギフテッドに含まれるそうです。言語理解が150台後半であるのに対し、一番低い処理速度は110台なので、高い指標と低い指標の差は40以上あります(知覚推理とワーキングメモリーは中間的な数値です)。
2Eギフテッドには、息子のように言語理解が高く処理速度が低いというタイプが多いそうで、このタイプの子は日常生活に困り感が出やすいそうです。
処理速度を改善するため、勉強をするときには時間を計るなど、ある程度時間を意識をして取り組ませるようにしてきました。ただ、処理速度が遅い人には、落ち着いて取り組ませることが大切だと専門家から聞き、遅いことを責めるような状況にならないよう心掛けています。
発達障害を持つ子を育てるコツとして、「得意を伸ばして、苦手はほどほどに」とよく言われますが、処理速度の改善もほどほどにしておかないと本人が辛くなってしまいます。苦手なことは頑張っても平均程度にしかなりません、我が家でも苦手の克服はほどほどに、時にはあきらめも大切だと考えています。
●同一指標の中でも凸凹がある場合
同一指標の中に得意・不得意があって、その中に凸凹が生ずる人もいます。
「同一指標の中の凸凹」についてはあまりピンとこないかもしれません。よろしければ以下の息子のケースをご覧下さい。
<我が家の場合>
息子の場合、知覚推理は120台後半なので比較的高い方ではあります。
ただ、「知覚推理が高い人は、整理整頓や、見通しを持って行動することが得意」と言われますが、息子はそれらが極端に苦手です。
一方、地図や地形を理解することは得意で、漢字なども一度見ると形をすぐに覚えてしまいます。映像の情報も正確に記憶してしまうので、知覚推理の中で非常に得意な部分があることがうかがわれます。
このように細かく見ていくと、知覚推理の指標の中でも色々な能力が含まれており、息子のように一つの指標内で凸凹がある人もいるのではないでしょうか。
ワーキングメモリーも知覚推理と同様に比較的高いですが、口頭だけの指示は頭に入らないことがあり、幼稚園時代は文字で書いてもらうなどの視覚支援を受けていました(現在では比較的改善されています)。
こちらも、ワーキングメモリーで示される能力の中に、高い部分と低い部分があるのではないかと考えています。
●結論
WISC-Ⅳの4つの指標間に差があっても、それだけで発達障害と断定されるわけではありません。
ただし、差が大きければそれだけ社会生活上の困難が生じやすいので、その可能性は高まります。
その判断には医師の診断が不可欠となります。
いかがでしたか?
この記事が、少しでもあなたの育児のお役に立てば、こんな嬉しいことはありません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。